文章書きための場
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3分クッキングのテーマソングが鳴り響く。
携帯を開いて、たった今着信したメールを見ると、短く一言「ファミレスに来い」とあった。隆治からだった。
「…来い。じゃねーよ」
文句を垂れつつもベッドから起き上がり、髪の毛に櫛を通す。胸まで伸ばしたそれを綺麗に三つ編みにして、リング状にする。ローズピンクのアイシャドウをうすく引き、パジャマからシフォンのワンピースに着替えた。
たかだか地元のファミレスに行く10分のために頭の天辺から足の先まで整えてしまう女の悲しさよ。
別に隆治なんかのためじゃない。奴に逢うだけならジャージだろうがスウェットだろうが何でもいいのだ。だが今の私は恋する乙女。恋する乙女は何処でどんなアクシデントに遭遇しても臨戦体制が取れるように武装する必要があるのだ。外見を変えるだけで気持ちまで変えられるなんて、女はお手軽だなぁ。
「よぉ」
「うん」
ファミレスに着くと、隆治はカフェラテを飲みつつ経済新聞を広げていた。
見た目はちゃらちゃらしているくせに、行動が似合わない奴だ。
店員に同じものを頼んで向かいの席に座る。
「で、休日にわざわざ私を呼びつけた用件はなんなの」
「お前、誕生日近いだろ」
「それがなによ」
「だからサービスしてやろうかと思って」
いきなり何を殊勝なことを言い出すのだ。こいつがこういう態度をとるなんて、何かきなくさいものを感じる。
「おら来たぞ」
…で振り替えると好きな人がいて、呼び出した本人が睦まじい二人を見て落ち込むっていうどうしようもない話。
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