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――朝だ…
一睡も眠れなかった…なんてことはなく、間抜けにもしっかり眠れた。なんてことだ。
時計がない上こちらの季節もわからないため、空を見たところで今が何時頃なのかわからない。
昨日は気付いたら寝てたもんな…
呑気なものである。時間がわかったところでどうということもないのだが、無性に気持ちは焦っていた。
恨めしげに時を止めたままの腕時計を睨んでみても、うんともすんとも言いやしない。
…いや、言ったら怖いけど。
携帯も反応無し。電池切れなんだろうか。

とりあえず埃っぽい床から腰をあげ伸びをする。いつもふかふかのベッドで寝ているせいか、身体が軋むように痛くなっている。首を回すと小気味いい音がぽきぽきと鳴った。
寝転ぶと全身が痛くなるだろうし、服も汚れるだろう。おまけに何されるかわからないので危ない―そう思っていざと言うときを考え、部屋の角で体育座りで寝たのだが、そのせいでお尻がじんじん痛む…
よく考えたらヤラれるか殺られるかわからない状況で逃げ場のない角にいるなんて馬鹿だ。
耳を澄ませてみても物音はしない。
とりあえず外の空気でも吸おう。窓はひどく汚れて正直触りたくないが、密閉空間にも堪えられない。
永らく開けられていなかったのかサッシの溝にゴミが溜まり、窓一つ開けるのに一苦労だった。
砂気のある埃っぽい風が入ってくる。空はいつも見ている水色よりずっと濃くて冴えた蒼色だ。
空気が綺麗なんだろうか?
一面の砂漠景色にいまいち実感が湧いてこない。
非現実。
そんな言葉が頭をもたげる。
私は何処にいるんだろう。皆は何処にいるんだろう。

「目ぇ覚ましたか」
「!」

突然の声に驚いて振り向くと、いつの間に現れたのか、扉に背をもたせかけた昨日の美人がいた。
金髪碧眼というその外見に目を奪われる。
普段なら目にすることのない髪と眼の色だ。

「さっさと説明してもらおうか」
「えっ」

何をだ。
美人さんは腕をくんでふてぶてしい顔をしている。どうやら親切に教えてくれる気はないらしい。

「説明と言われても」
「てめーが何処の誰で、何の目的であそこにいたのかってことだよ」
「はぁ」

そんなことを言われても、自分の知らないことを語る言葉はない。
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