文章書きための場
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「お姉ちゃん、このケーキ食べるの?」
プレイ中のテトリスを停止して声のしたほうに反射的に振り向くと、あのこの入れ代わりみたいに産まれたチビの妹が、冷蔵庫から私が手を付けていないショートケーキを持ち出して聞いた。
「食べてもいいけど、ベランダと庭の花の水やりあんたがやってよ」
別に期待はしていなかったのだが、そう言った数瞬後には私は既にテトリスを再開していたし、妹はダッシュで赤いぞうさんじょうろに水を容れ始めていた。
小さな子供は従順で単純なところがいい。それ以外に魅力なんてあるのか?
生意気で泣き虫な子供なんかこの世界から消え失せてしまえ。無茶なことを願ってみる。
私の妹は実に単純で、今もケーキという見返りを求めて私の言うことをよくきいてくれている。
細い腕で効率が悪い小さなじょうろを使い、ガーデニングが大好きなお母さんの可愛い分身達に餌を与える。
労力の無駄遣いだなぁ…
などと私は思うのだが、当の本人は割の合わないケーキ一切れでお姉ちゃんのいうことをはいはいときいてくれるのだから、かわいらしいことこの上ない。
「ありがとねー」と揺れる二つ結びの髪に向かって私はぽつりと零した。聞こえていないかもしれない。
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