忍者ブログ
文章書きための場
[17]  [16]  [15]  [14]  [13]  [12]  [11]  [10]  [9]  [8]  [7
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

あぁ もう終わりかな、って思った。

こんなところ。




私は過去、喧嘩が強かった。
今だって体が鈍ってはいるが、1対3くらいまでなら勝てる自信も充分にある。
大体、女同士の体張ったやりあいなんて醜くなんでもありだ。
銃なんか飛び道具はないにしても、ナイフも釘もコンクリブロックも、振ればそれなりの凶器。始めたが最後、いかに情けをかなぐり捨てるか。

私は喧嘩は好きじゃない。
ストレス発散の捌け口として便利でも、自分が殴るのはよくても、やられるのは痛いから嫌い。まあそれを知っているからこそ人は人を殴るんだろうけど。
私はそんなことに魅力を感じるまで変人じゃない。

そしてあの人は私を拾った。

「変なカッコの男」

そう思った。
でもその変なカッコの男は、血溜まりで地面に抱き着く私にただ
「アナタ大丈夫ですかァ?」
と言って口端を持ち上げた。


「…大丈夫に見えたら眼科にどうぞ」
「ははっ、面白いこと言いますねぇ、アナタ」

男は手にしていた白い扇子を素早く広げて口元にあてがい、笑った。変な人。


「変なカッコのあなた、慈悲の心をもってして、あそこの側溝に落ちてしまう寸前の危うい私のケータイを拾って持って来てくれませんか」

動かない体は敢えて動かさない。
視線だけ外灯に照らされている携帯を見る。
男も私の視線にそってそちらを見る。


「待っててください」


正直以外だった。
まさかきいてくれるとは。
別に逃げればいいのにね。
逃げられたくないけど、本当にそうされたらちょっと寂しいけど、世はリンチされた女子高生には優しくしてくれるみたい。
私だったらそんなの全力疾走して無視するだろう。

それとも地面に転がっている他人を無視しないなんて、やっぱりあの人は変な人なのか。


立ったまま腰を曲げて携帯を掴み、ちょっと自分の服の袖で血を拭いながら男は問う。

「何したらそこまでなるんですか」
「8人くらいにリンチされたらこんな風に…」
「そうです、か」

「か」で携帯を差し出されてそれを受け取る。

「…弱い人達は束にならないと駄目なんです。いつまでもそうだから弱いまんまなのに。
 本当に強い人は無駄に喧嘩なんかしないのに。
ぎゃあぎゃあ騒いでたりしないで我が道いってるのに」

聞いてくれる人がいるせいでやや饒舌になってしまう。

「あなたはなんだか喧嘩強そうですよね。」

男に向かって何と無くそう言う。

男の体は着物で隠れているからわかりにくいが、袖から覗いた腕はよく鍛えられているように見えた。
青春時代はなにかスポーツでもやっていたのかなぁと考え、男の顔を見るとそこで初めて目が合った。
笑いもしないけど無表情というわけでもなくて、ただ単に私を見下ろしているだけなんだと思う。

「喧嘩は…まあ弱くもないでしょうが。喧嘩はしたことがないので…。
ただ、殺しあいはあっても」

さりげにすごいことを言いなすった。

「殺しあいのほうが簡単ですか?」



「少し時間はありますか?」
「何ですか、ナンパですか。ときめきますよ」

何言ってんの私。
痛みのあまり朦朧としてるのかな。

「まあ、ナンパっちゃあナンパですかね、お付き合いください」


差し出された手が欲しかった。
どうなってもいい。

「よろこんで」


手に手を取り合ってからは、私はあなたの所有物。
私がそう決めたから。

変な人の名前は「 」といった。
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
フリーエリア
最新CM
最新記事
最新TB
プロフィール
HN:
のあ
HP:
性別:
女性
バーコード
ブログ内検索
最古記事
(08/24)
(08/24)
 
(08/24)
 
(08/24)
(09/17)
(09/19)
(09/19)
忍者ブログ [PR]