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そもそも私と雪は友達でもない。

それでも傍から見れば多くの時間を一緒に過ごす二人の少女の姿は、仲睦まじい親友にでも見えたのかもしれない。だが実際にそんなことはない。私には友人らしい友人もいないのでよく知らないが、私達の関係は周りにふわふわといる他人達の友情のそれとはおよそ似ても似つかないと思う。だからといって雪にそれを求めることはなかったし、雪との間に広く一般の友人の付き合いを得られないからといって、雪以外の人物と必要以上のコンタクトをとろうとも思わなかった。
結局、私は雪と別れた後いつものように家に帰り、いつものように酒の臭いを嗅ぎ、いつものように生酔いの親父の背中を軽く蹴った。
「娘は雪の中学業に勤しんで来たってのにその親父が家で酒?」
「何だ春か。ただ今日は休みなだけじゃないか。日曜に必ず休みのある君と違って僕は毎日働き詰めなんだ。なのに、ああ!何ともはや、一人娘に僕は蹴られてるなんて。全く現代っ子の恐ろしさは限度を知らない」
そういうと親父はあからさまに泣いたふりをした。付き合っていられない。無視をして散乱する雑誌や文庫を一冊ずつ部屋の真ん中のテーブルに積み上げていく。
「何だってこんなに散らかしてくれるかな。本を読むなとは言わないけれど、片付けてくれないんならこんなに溜めないでさっさと売ればいいのに」
「片付けようとすると君が片付けてくれるから。タイミングの問題だ」
「貴方の不精の問題です」
「何だってそう日毎に母親に似るのかな、君は」
「お父様に似るとお父様の世話をする人間がいなくなるからです」
「言い得て妙だねぇ」
感心する暇があるなら片付けを手伝え駄目人間。そう思っても口にはせずに最後の一冊をぽすんと本の束に落とす。言い合いをしたとて反抗し続けないのは私なりの親孝行だ。なんだかんだ、親に感謝する情があるからである。
嘘だ。ただ単にこの男と喧嘩をするのが無理だからだ。相手が何故怒るのかを根本的に理解していない人間に対してこちらが一方的にふて腐れて、疲労するだけなのは経験上揺るぎない。
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