文章書きための場
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…苛つく。
「ねえ、なんで遅刻してくるの」
「いや、実は俺の家だけ暴風警報でててさァ」
そんないいわけは面白くも何ともない。憎たらしい。
「ねえなんで時間が守れないの」
「目覚まし時計のヤロウがご機嫌ななめでよ」
一方はへらへら笑う男、もう一方は仏頂面で今にも爆発しそうな女。
ピリピリしたムード(主に女が発する)に喫茶店の客たちや店員さえもちらちらと視線を送るが、私は目の前の男だけに視線を合わせる。
「覚悟せいよ…」
込めるは右足。ありったけの力。
ぐんと振り上げた足は孤を描いて、男の座る椅子に向かい、バァンと盛大な音をたてて衝撃をあたえる。
見ると女のかわいらしい爪先がとんがった靴は、先が潰れてしわが依っていた。
こちらの被害も大きいと思われる。
女はジンジンとした痛みをやせ我慢している。
「ヤス…今のは相当響いたぞ」
「…天誅」
「大きいな」
震度5。そう呟いた女はバッグをひっ掴んで喫茶店をあとにする。入り口のベルが鳴る。
男は慣れた動きで会計をすませるとため息を一つ、女の蹴りが効いたのを尻を何度もさすることで暗に示しているかのように、苦痛の顔で出ていった。
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