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鬱だ。

友達が死ぬ夢を見た。
私の家に泊まりに来た彼女はいつも無造作にくくっていた髪をほどいていて、眼鏡の奥の気だるそうな瞳が、匂い立つようにエロティックだった。私は彼女の話を熱心に聴いているようでいて、その実彼女の美しさに心を奪われて、絶対に視線を合わせないその瞳をことあるごとに盗み見ていた。
彼女はかたくなだった。
家になど絶対に戻るものかという雰囲気だった。彼女とその家族との軋轢は私には推し量ることが難しかったけれど、怒りの中に時折見え隠れする寂しさを見つけてしまったら、突然現れた彼女に対して「帰れば」なんて無粋なことは言えなかった。
壊れ物みたいな彼女の瞳がうるうると濡れているのを見ると、人に優しくする仕方なんて私にはわからないからとても困ったけれど、「一緒にテレビを見ないか」だとか、「このお菓子美味しいよ」とか言葉を投げ掛けると、彼女は決まって小さな子供みたいにこくりと頷いたから、その度に私はほっとした。

小さな私の部屋に彼女のスペースを作るのは、実際物理的に難しかった。
でも本能がそうさせるのか、彼女はベッドの上、部屋の角で膝を丸めていることが多かった。
口数は少なくて、たまにぼそぼそと話しかけてきたけれど、やっぱりいつも寂しさが現れていた。
私も私で、いきなり部屋に自分以外の匂いや気配のすることに最初は戸惑った。ハミングだとかオナラだとか、諸々の点にも困ったけれど、しばらくしてペットでも飼ってると思えば幾分気持ちが楽になった。

彼女は気付くと膝を抱えたままの状態で壁にもたれて寝ていた。
これもまた困りもので、横にしてあげたくても触れると起こしてしまうかもしれない。たとえ起きなくても意識のない人間は重くて、取り扱いが難しいのだった。
高身長の彼女はベッドの大半のスペースをとることに申し訳なさを感じているようだった。

ある日私がお風呂からあがり部屋に戻ると、彼女はベランダでまたも膝を抱えていた。
「寒いでしょ」
隣にしゃがんで声をかけると、彼女は視線だけ動かして私を視認すると、視線をすっと夜景に戻した。
さてどうしたものかと悩み始めると間もなく彼女が家出の理由をとつとつと語り始めた。
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